黒字なのにお金がない?事業者が陥りやすい資金繰り悪化の原因5選

資金繰り

「売上は増えているのに、なぜか銀行口座のお金が増えない」

「決算では利益が出ているのに、支払いが苦しい」

「黒字だから大丈夫だと思っていたら、納税時期に資金が足りなくなった」

このような状態は、事業を始めたばかりの個人事業主や法人だけでなく、売上が拡大している事業者でも起こります。

その理由は、「利益」と「手元のお金」は同じではないからです。

例えば、100万円の商品を販売し、利益が20万円出たとしても、その100万円をまだ取引先から回収していなければ、銀行口座にはお金が入ってきません。

一方で、仕入代金や人件費、家賃、借入返済などの支払いは発生します。

つまり、事業では、

「儲かっているか」だけでなく「いつお金が入って、いつ出ていくのか」

を見る必要があります。

この記事では、事業者が陥りやすい資金繰り悪化の原因を5つに分けて解説します。


1. 売上が増えるほど資金繰りが苦しくなる

資金繰りで意外と見落とされるのが、「売上が増えれば増えるほど、お金が苦しくなるケースがある」ということです。

一見すると矛盾していますが、ポイントは売上の計上日と入金日が違うことです。

例えば、次のような事業を考えてみます。

【例】

1月に100万円の商品を販売

取引先への請求は1月末

入金は3月末

この場合、1月には100万円の売上が発生しています。

しかし、実際に100万円が銀行口座に入ってくるのは3月です。

その間にも、

  • 仕入代金
  • 人件費
  • 家賃
  • 外注費
  • 借入返済
  • 税金

などの支払いが発生します。

つまり、

売上が増える → 仕入れや経費も増える → 先に支払いが発生する → 売上代金の回収前に現金が減る

ということがあります。

特に掛取引が多い事業では、売掛金が増えるほど、帳簿上の利益と手元資金の差が大きくなる可能性があります。

「売上目標」だけでなく「回収目標」を作る

多くの事業者は、

「今月は売上500万円を目指そう」

と考えます。

しかし資金繰りを考えるなら、

「今月はいくら売るか」だけではなく「今月はいくら回収するか」

も重要です。

例えば、

  • 売上500万円
  • 当月入金200万円
  • 翌月入金200万円
  • 翌々月入金100万円

なら、売上500万円でも当月使えるお金は200万円です。

「売上管理」と「入金管理」を別々に考える。

これだけでも資金繰りの見え方は大きく変わります。


2. 仕入れ・外注費などの支払いが売上回収より先に来る

2つ目は、お金が出ていくタイミングと入ってくるタイミングのズレです。

例えば、

  • 1日に仕入代金100万円を支払う
  • 15日に従業員給与を支払う
  • 20日に家賃を支払う
  • 25日に外注費を支払う
  • 翌月末に売上代金200万円が入金される

という事業の場合、一時的に多額のお金が必要になります。これがいわゆるサイトの問題です。

利益が出る事業でも、入金より支払いが先に集中すると、資金繰りは苦しくなります。

特に危険なのが「急成長」

例えば、毎月100万円売っていた会社が、翌月から毎月500万円売れるようになったとします。

普通なら、

「売上が5倍になったから、経営はかなり順調」

と考えるでしょう。

しかし、商品を仕入れて販売する事業なら、売上が5倍になる前に仕入資金も必要になります。

つまり、売上拡大 → 仕入増加 → 支払増加 → 入金は後 → 手元資金減少となる可能性があります。

この現象は、いわば「成長による資金不足」です。

「売上を伸ばす前に、運転資金を計算する」

売上を増やすこと自体を悪いことと考える必要はありません。

ただし、

「売上を100万円増やしたら、先にいくらのお金が必要になるのか?」

を考えることが重要です。

例えば、100万円の売上を作るために、先に60万円の仕入れが必要で、その売上代金が2か月後に入るなら、

売上を増やすこと=一時的に60万円以上の資金を追加で必要とする可能性があります。

資金繰りが楽になる時期までの資金調達(借入)も事前に考えておくことが大切です。

目安として、最低でも資金が必要となる2~3ヶ月前には金融機関へ事前相談を行っておきましょう。


3. 税金・社会保険料を「後から来る支払い」と考えてしまう

資金繰りで特に注意したいのが税金です。

利益が出れば税負担が発生します。しかし、事業をしていると、

「今は口座にお金があるから大丈夫」

と考えてしまうことがあります。

税金は「今の現金」ではなく「過去の利益」に対して発生する

例えば、1年間で利益が500万円出たとします。

その間に、

  • 新しい設備を購入した
  • 事業拡大のために広告費を使った
  • 借入金を返済した
  • 仕入れを増やした

などによって、手元のお金を使っていたとします。

すると、

「利益は出ているのに、納税時期には現金が少ない」

ということが起こります。

特に消費税については、課税事業者の場合、預かった消費税等をそのまま自分のお金として使わないことが重要です。

「税金用のお金」を最初から別物として考える

資金繰りを安定させるためには、

「口座残高=自由に使えるお金」

と考えないことが重要です。

例えば口座に300万円あっても、

  • 税金用100万円
  • 給与用80万円
  • 仕入支払用70万円
  • 本当に自由に使えるお金50万円

という可能性があります。

つまり、「残高300万円」ではなく「実質的に使える残高はいくらなのか」を見る必要があります。

資金繰り表を作成する上では、納税費用も踏まえたものを作成しましょう。


4. 借入返済によって「利益」と「現金」の差が広がる

資金繰りを考えるうえで、もう一つ見落としやすいのが借入金の返済です。

例えば、

  • 売上:1,000万円
  • 経費:800万円
  • 利益:200万円

だったとします。

しかし、借入金の元金を年間150万円返済していた場合、

単純化すると、

利益200万円 − 借入元金返済150万円

となり、手元に残るお金は大きく減ります。

ここで重要なのが、

借入金の元金返済は、利益を計算するときの「経費」とは同じではない

という点です。

そのため、「利益が200万円出ているから、200万円程度のお金が残る」とは限りません。

「利益」ではなく「返済後の現金」を見る

融資を受けるとき、

「この事業は利益が出るから返済できる」

と考えるだけでは不十分です。

実際には、

利益

税金

借入元金返済

設備投資

生活費・役員報酬など

最終的にいくら現金が残るか
 を見る必要があります。

特に複数の金融機関から借入をしている場合、毎月の返済額を合計して把握しておかないと、資金繰りが急に苦しくなることがあります。


5. 「資金がなくなる月」ではなく「資金が減り始めた月」を見ていない

資金ショートは、突然発生するように見えます。

しかし実際には、

資金ショートする数か月前から、原因が発生していることが多い

と考えたほうがよいでしょう。

例えば、

1月

売掛金が増える

2月

仕入れが増える

3月

設備投資をする

4月

税金の支払いが発生

5月

口座残高が急減

6月

資金ショート

という流れです。

6月になって、

「お金が足りない!」

と気付いても、問題は6月に突然発生したわけではありません。

1月から資金繰り悪化の種が積み重なっていた可能性があります。


🔥 資金繰り表は「未来の残高」を見るためだけのものではない

ここは一般的な資金繰り記事との差別化ポイントとして、ぜひ入れたい部分です。

資金繰り表というと、

「来月いくらお金が残るかを見る表」

というイメージがあります。

しかし、もっと面白い使い方があります。

それは、

「もし○○したら、資金繰りはどうなる?」

をシミュレーションすることです。

例えば、

ケース①

「500万円借りたら?」

ケース②

「車を300万円で購入したら?」

ケース③

「従業員を1人増やしたら?」

ケース④

「取引先への支払条件が30日から15日になったら?」

ケース⑤

「売上が20%減少したら?」

こうした条件を資金繰り表に入れてみます。

すると、

「今は大丈夫」ではなく「この条件になると危ない」

というラインが見えてきます。


資金繰りを改善するなら「利益」より先に5つを見る

ここまでの内容をまとめると、資金繰りを見るときは、単純に「利益が出ているか」だけを確認するのではなく、次の5つを確認することが重要です。

確認するポイント見るべきこと
① 売上売上はいくらか
② 回収いつ現金になるのか
③ 支払いいつお金が出ていくのか
④ 税金・返済将来いくら必要なのか
⑤ 残高最低いくら手元に残す必要があるのか

特に重要なのは、

「売上」→「入金」→「支払い」→「税金・返済」→「最終残高」

という順番で考えることです。


まとめ|「黒字だから安心」は資金繰りでは危険

事業において利益を出すことはもちろん重要です。

しかし、利益が出ている=資金繰りが安全とは限りません。

特に注意したいのが、

  1. 売上が増えても入金は後になる
  2. 成長すると仕入れなどの先行支出が増える
  3. 税金は後からまとまってやってくる
  4. 借入返済によって現金が減る
  5. 資金ショートの原因は数か月前から始まっている

という5つです。

そして、資金繰りを考えるときに最も大切なのは、

「今いくらあるか」ではなく「このまま進んだら、いつ、なぜ、お金が足りなくなるのか」

を見ることです。

資金繰り表を単なる残高確認表ではなく、「借入・採用・設備投資・売上減少などを試す経営シミュレーター」として使えば、資金ショートを事前に発見できる可能性が高まります。

「お金がなくなってから資金調達を考える」のではなく、お金がなくなる前に原因を見つけることが、安定した事業経営につながります。

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