「これから個人事業主として創業するけれど、会計の知識がない……」
「法人を設立したものの、何を帳簿に記録すればいいのか分からない」
創業したばかりの事業者にとって、会計・経理は避けて通れない重要な業務です。
しかし、最初から簿記の専門知識をすべて身につける必要はありません。
創業時にまず理解しておきたいのは、
- 売上と利益の違い
- 経費とは何か
- 事業のお金と個人のお金を分けること
- 領収書・請求書などの保存
- 帳簿への記録
- 決算・確定申告との関係
- 資金繰りと利益の違い
といった「事業のお金の流れを正しく把握するための基本」です。
この記事では、会計知識がほとんどない創業者の方でも理解できるように、創業時に押さえておきたいポイントを10項目に絞って解説します。
1.そもそも「会計」と「経理」は何をするもの?
まず、「会計」と「経理」の違いから整理しましょう。
簡単にいうと、
経理=日々のお金の取引を記録・管理する仕事
会計=その記録をもとに、事業の利益や財産などを把握する仕組み
と考えると分かりやすいでしょう。
例えば、飲食店を創業した場合、
「商品を10万円売った」
「食材を3万円購入した」
「店舗の家賃を10万円支払った」
「電気代を2万円支払った」
といった取引が毎日のように発生します。
これらを何も記録していなければ、
「今月はいくら儲かったのか?」
「お金はどれくらい残っているのか?」
「税金はいくらくらいになりそうなのか?」が分からなくなってしまいます。
そこで、日々の取引を記録し、最終的に事業の成績や財産状況を把握できるようにするのが会計・経理の大きな役割です。
2.「売上」と「利益」は違う!創業者が最初に覚えるべきこと
会計初心者が最も勘違いしやすいのが、
売上=儲けではないということです。
例えば、
売上:500万円
だったとしても、
- 商品仕入れ:200万円
- 家賃:60万円
- 人件費:80万円
- 広告費:30万円
- 通信費:10万円
- その他経費:40万円
だった場合、
500万円-420万円=80万円
となります。
この80万円が、簡単にいうと「利益」です。
つまり、
売上が大きい会社=利益が大きい会社
とは限りません。
売上が1,000万円あっても経費が950万円なら利益は50万円です。
逆に、売上500万円でも経費が200万円なら利益は300万円です。
創業したら、単純な売上だけではなく、
「最終的にいくら利益が残っているのか」を見る習慣をつけることが非常に重要です。
3.「経費」とは何?何でも経費になるわけではない
事業を始めると、「これは経費にできるの?」という疑問が次々に出てきます。
経費とは、簡単にいえば、事業を行うために必要となる支出です。
例えば、
- 事務所の家賃
- 事業用の通信費
- 広告宣伝費
- 消耗品費
- 仕入れ
- 交通費
- 業務に必要な外注費
などが考えられます。
一方で、
「プライベートで使った食事代」
「個人的な買い物」など、事業とは関係のない支出を自由に経費にすることはできません。
また、仕事とプライベートの両方で使用しているものについては、事業で使用している部分を適切に区分する必要があります。
例えば、自宅の一部を仕事場として使用している場合、家賃や光熱費などについて事業使用分を合理的な基準で区分することがあります。
4.創業したら「事業のお金」と「個人のお金」を分ける
創業直後に非常に重要なのが、事業のお金とプライベートのお金を混ぜないことです。
個人事業主の場合、
「自分のお金だから一緒でいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、事業用のお金と生活用のお金が混ざると、経理が一気に難しくなります。
例えば、
事業用口座から生活費として20万円を引き出した
個人のお金で事業用のパソコンを購入した
といった取引が頻繁に発生すると、帳簿上の処理が複雑になります。
そのため、創業時から、
できれば用意したいもの
- 事業用銀行口座
- 事業用クレジットカード
- 会計ソフト
- 領収書・請求書の保管場所
を準備しておくと管理しやすくなります。
法人の場合は、会社のお金と代表者個人のお金を明確に分けることが特に重要です。
5.領収書・請求書は「捨てない」が基本
創業すると、「領収書って取っておいたほうがいいの?」という疑問が出てきます。
結論として、事業に関係する取引の証拠となる書類は、適切に保存することが重要です。
例えば、
- 領収書
- 請求書
- レシート
- 契約書
- 通帳の記録
- クレジットカードの利用明細
- 売上に関する書類
などです。
なぜ保存する必要があるのでしょうか。
理由の一つは、帳簿に記録した取引を後から確認できるようにするためです。
例えば、
「去年の広告費として30万円を計上した」
のであれば、
「本当に30万円支払ったのか?」
を確認できる資料が必要になります。
また、税務上の保存要件が定められている書類もあります。
そのため、
「とりあえず領収書は全部残しておく」
というくらいの意識でスタートすると安心です。
6.「帳簿」は何のためにつけるの?
帳簿とは、事業で発生した取引を記録するものです。
例えば、
| 日付 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 4月1日 | 商品販売 | 100,000円 |
| 4月2日 | 仕入れ | 40,000円 |
| 4月3日 | 通信費 | 10,000円 |
| 4月5日 | 広告費 | 20,000円 |
というように記録していきます。
帳簿をつける目的は、単に税務申告をするためだけではありません。
「自分の事業が今どういう状態なのか」を把握するためにも重要です。
例えば、
「売上は増えているのに、お金が残らない」という場合があります。
帳簿を確認すると、
「仕入れが増えている」
「広告費が増えている」
「外注費が増えている」
など、原因が見えてくることがあります。
つまり帳簿は、税金のためだけではなく、経営判断のためにも必要なのです。
7.創業者が知っておきたい「利益」と「現金」の違い
利益が出ている=手元に現金があるとは限りません。
例えば、
100万円の商品を販売したものの、
「入金は3か月後」という取引だったとします。
帳簿上では売上として計上されても、現時点では銀行口座に100万円が入っていません。
一方、
「仕入先への支払いは翌月」
という場合には、先に支払いが発生する可能性があります。
このように、利益が出ていても、支払いに必要な現金が不足することがあります。
これがいわゆる資金繰りの問題です。
創業者は、
「いくら儲かっているか」
だけではなく、
「いつお金が入って、いつお金が出ていくのか」
も確認する必要があります。
特に、
- 売掛金が多い
- 在庫を多く抱える
- 設備投資が大きい
- 借入金の返済がある
といった事業では、資金繰りの管理が重要になります。
8.「減価償却」という言葉も覚えておこう
創業時には、パソコンや機械、車両、店舗設備など、高額なものを購入することがあります。
ここで覚えておきたいのが、「減価償却」という考え方です。
例えば、事業用の設備を100万円で購入したからといって、必ずしも購入した年に100万円すべてを経費として処理するとは限りません。
一定の資産については、税務上定められた耐用年数などに応じて、複数年にわたって費用として計上していく場合があります。
これが減価償却です。
ただし、資産の種類や金額、取得時期などによって取り扱いが異なります。
そのため、「高額な設備を買った=その年に全額経費」と自己判断しないことが大切です。
創業時に大きな設備投資をする場合は、税理士や税務署、会計ソフトのサポートなどを利用して確認しましょう。
9.決算・確定申告では何をするの?
1年間事業を行うと、その期間の売上や経費などを集計して、事業の成績を確認します。
法人であれば、原則として事業年度ごとに決算を行い、法人税等の申告・納税につなげます。
個人事業主の場合は、原則として1月1日から12月31日までの所得を計算し、確定申告を行います。
イメージとしては、
日々
取引を記録する
↓
月ごと
売上・経費・利益・現金残高などを確認する
↓
1年間
1年間の取引を集計する
↓
決算・確定申告
利益や所得などを計算して必要な申告・納税を行う
という流れです。
つまり、
決算や確定申告は、1年間の取引を最後にまとめる作業
と考えると分かりやすいでしょう。
10.創業時は「会計ソフト」を活用すると管理しやすい
最後に、創業者の方におすすめしたいのが会計ソフトの活用です。
昔は、
「簿記の知識を身につけて、手書きで帳簿を作る」という方法も一般的でした。
しかし現在は、会計ソフトを利用することで、初心者でも比較的管理しやすくなっています。
例えば、
- 銀行口座との連携
- クレジットカードとの連携
- 売上・経費の入力
- 帳簿作成
- 決算書作成のサポート
- 確定申告書作成のサポート
などの機能を備えたサービスがあります。
ただし、「会計ソフトを使えば何も考えなくていい」というわけではありません。
重要なのは、
「この支出は何のためのものなのか?」
「事業に関係する支出なのか?」
「いつ売上が発生して、いつ入金されるのか?」
といった、事業者自身がお金の流れを理解することです。
会計ソフトは、その管理を効率化するための道具として活用するとよいでしょう。
やよいの青色申告オンライン創業時に最低限覚えておきたい会計知識まとめ
ここまでの内容を簡単にまとめます。
| 項目 | 創業者が覚えておきたいポイント |
|---|---|
| 売上 | 商品・サービスを販売して得た金額 |
| 利益 | 売上から必要な費用などを差し引いた残り |
| 経費 | 事業を行うために必要となる支出 |
| 帳簿 | 日々の取引を記録するもの |
| 領収書等 | 取引を確認するための重要な資料 |
| 事業用口座 | 個人のお金と事業のお金を分けるために便利 |
| 資金繰り | お金の入金・支払いのタイミングを管理すること |
| 減価償却 | 一定の資産の取得費を複数年にわたって費用化する考え方 |
| 決算 | 一定期間の事業成績や財産状況をまとめること |
| 会計ソフト | 会計・経理業務を効率化するためのツール |
まとめ:創業時は「難しい簿記」より「お金の流れ」を理解しよう
創業すると、
「会計って難しそう……」
と感じる方も多いと思います。
しかし、最初から複雑な簿記の知識をすべて覚える必要はありません。
まずは、
①売上を把握する
②経費を把握する
③利益を把握する
④事業のお金と個人のお金を分ける
⑤領収書・請求書などを保存する
⑥日々の取引を帳簿に記録する
⑦資金繰りを確認する
という基本を押さえましょう。
そして、事業が成長してきたら、決算・税務申告・資金調達などについて専門的な知識を身につけていけば十分です。
創業時の会計で最も大切なのは、
「いくら売れたか」だけではなく、「いくら利益が残り、いつお金が入って、いつお金が出ていくのか」を把握すること
この習慣を創業初期から身につけておくことが、安定した事業運営につながります。
※本記事は創業者・会計初心者向けの一般的な情報をまとめたものです。実際の会計・税務処理は事業内容や取引内容、個人事業主・法人の別などによって異なります。具体的な処理については税理士等の専門家への確認をおすすめします。


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