はじめに
事業を始めたばかりの個人事業主や法人にとって、資金調達は非常に重要です。
設備投資、仕入れ、人件費、広告費など、事業を運営しているとまとまった資金が必要になる場面があります。
特に、
- 銀行から融資を断られた
- 創業したばかりで実績が少ない
- 急な支払いが発生した
- 今月の資金繰りが厳しい
- 税金や仕入代金の支払いが迫っている
といった状況では、「すぐに融資できます」「審査が簡単です」といった広告や電話に魅力を感じてしまうことがあります。
しかし、ここには注意が必要です。
実際に金融庁も、融資を実行する前に保証料・手数料などの名目で金銭を振り込ませ、その後融資を実行しない「融資保証金詐欺」について注意喚起しています。(金融庁)
本記事では、金融トラブルに詳しくない事業者の方でも理解できるように、融資保証金詐欺の具体的な手口や注意点を解説します。
1.融資保証金詐欺とは?
簡単にいうと、
「融資する」と約束しておきながら、融資を実行する前に保証料や手数料などを支払わせ、そのまま融資を実行しない詐欺です。
例えば、次のようなケースです。
具体例
事業者Aさんがインターネットで「法人向け融資・最大1,000万円」などと表示された広告を見つけました。
問い合わせをすると、
「審査の結果、500万円まで融資可能です」
と言われます。
ところが、その後、
「融資実行前に保証料として20万円必要です」
と言われます。
Aさんが20万円を振り込むと、
「追加で信用確認費用が必要です」
「金融機関への登録費用が必要です」
など、さらに支払いを要求されます。
最終的には、
融資が実行されないまま、相手と連絡が取れなくなる。
これが典型的なパターンです。
2.なぜ事業者は騙されてしまうのか?
特に注意したいのが、資金繰りに困っているときほど判断を急ぎやすいという点です。
例えば、
「明日までに仕入代金を払わなければならない」
という状況で、
「今日申し込めば500万円融資できます」
と言われたら、冷静な判断が難しくなる可能性があります。
さらに、
- 審査が早い
- 担保不要
- 代表者保証不要
- 即日対応
- 他社で断られても相談可能
など、事業者が魅力を感じやすい言葉を使って勧誘するケースがあります。
3.特に注意したい「融資前の支払い」
融資を申し込んだ際に、
「融資を実行するため、先にお金を振り込んでください」
と言われた場合は、慎重に確認しましょう。
例えば、
| 相手から要求された名目 | 注意度 |
|---|---|
| 保証料 | ⚠️ 要確認 |
| 審査費用 | ⚠️ 要確認 |
| 信用情報登録料 | ⚠️ 要注意 |
| 金融庁への供託金 | ⚠️ 要注意 |
| 融資実行手数料 | ⚠️ 要確認 |
| 保険料 | ⚠️ 要確認 |
| 金利の先払い | ⚠️ 要注意 |
「融資してもらえるなら、先に少額を払ってもいい」
と安易に考えないことが重要です。
4.「金融庁の名前が出てきたら安心」は間違い
詐欺では、実在する公的機関や金融機関の名前を使って信用させようとするケースがあります。
例えば、
「金融庁の規定で保証料が必要です」
「金融庁への登録費用です」
などと説明されるケースです。
金融庁は、個人の信用情報を管理したり、個別の融資に関与したりする機関ではありません。
5.「登録番号が書いてあるから安心」とは限らない
さらに注意したいのが、貸金業者の登録番号です。
正規の貸金業者は、貸金業を行うために登録が必要です。金融庁も、借入れをする場合には登録の有無を確認するよう案内しています。
しかし、「広告に登録番号が書いてある=安全」とは限りません。
金融庁は、無登録業者が架空の登録番号や他の登録業者の登録番号を使用するケースについても注意喚起しています。
そのため、相手が提示した情報をそのまま信用するのではなく、公的な情報から登録状況を確認することが大切です。
6.こんな勧誘には特に注意
次のような言葉が出てきた場合は、一度立ち止まりましょう。
ケース①「保証料を払えば融資できます」
500万円の融資を受けるために、
「保証料10万円を先に振り込んでください」
と言われるケース。「先に」という点に「おや?」と感じて下さい。
ケース②「信用情報を改善するために費用が必要」
「信用情報に問題があるため、登録費用を支払えば融資できます」
などと言われるケース。信用情報の回復を目的に費用を支払うことはありません。
ケース③「金融庁の手続き費用が必要」
「金融庁への供託金が必要です」
などと説明されるケース。貸金業者が融資を行うのに金融庁へ支払う費用は関係ありません。
ケース④「金利を先払いしてください」
「初回融資なので、最初の3か月分の金利を先に支払ってください」
などと言われるケース。闇金などでよくあるケースです。
7.正規の金融機関から融資を受ける場合との違い
もちろん、融資に関して手数料や保証料などの費用が発生すること自体を、すべて「詐欺」と判断することはできません。例えば、民間の金融機関においても融資条件によっては利息の先払いが行われることがあります。
重要なのは、誰に、何のために、いくら支払うのかを確認することです。
例えば、
- 契約書があるか
- 融資条件が明確か
- 会社の所在地が確認できるか
- 正規の登録を受けているか
- 支払い先が不自然ではないか
- 担当者だけでなく公式窓口でも確認できるか
などを確認しましょう。
「今日中に振り込まないと融資できない」など、確認する時間を与えない相手には特に注意が必要です。
8.もし怪しい融資に申し込んでしまったら?
「もしかしたら詐欺かもしれない」
と思った場合、焦って追加のお金を支払うのは避けましょう。
すでに振り込んでしまった場合は、
① 追加送金をしない
「あと5万円払えば融資できます」と言われても、さらに支払わないことが重要です。
② やり取りを保存する
- メール
- SMS
- LINE等のメッセージ
- 電話番号
- 振込先口座
- 契約書
- 請求書
- 相手のウェブサイト
などを保存しておきましょう。
③ 振込先の金融機関へ相談する
金融庁も、被害に遭った場合には早急に振込先の金融機関へ相談するよう案内しています。状況によっては、振込先口座に残っている資金が返還される可能性があります。
④ 警察等にも相談する
詐欺が疑われる場合は、警察への相談も検討しましょう。
9.事業者が融資を受ける前に確認したいチェックリスト
最後に、融資を申し込む前に以下を確認してみましょう。
□ 会社の正式名称を確認した
□ 所在地・電話番号を確認した
□ 貸金業者として登録されているか確認した
□ 融資条件を書面で確認した
□ 融資前に保証料などを求められていないか
□ 個人名義の口座への振込を求められていないか
□ 「今日中」「今すぐ」などと急かされていないか
□ 金融庁などの公的機関の名前を利用していないか
□ 他社から断られたことを理由に特別な融資を勧められていないか
一つでも不自然な点があれば、その場で判断せず、一度立ち止まることをおすすめします。
10.まとめ
事業を経営していると、どうしても資金が必要になる場面があります。
特に創業直後や売上が安定していない時期には、
「とにかく今すぐお金が必要」という状況になることもあります。
しかし、そんなときこそ注意が必要です。
今回紹介したような、
「融資するので、先に保証料を払ってください」
「金融庁への手続き費用が必要です」
「信用情報を改善するためにお金が必要です」
といった話が出てきた場合は、安易に支払わないようにしましょう。
資金繰りに困ったときほど、「早く借りる」よりも「安全に調達する」という視点を持つことが大切です。
なお、本記事は金融トラブルを避けるための一般的な情報を提供するものであり、個別の業者や契約について違法性を判断するものではありません。具体的なトラブルが発生している場合は、金融庁、警察、弁護士等の専門窓口への相談を検討してください。


コメント